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素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

「相葉さーん、聞いてますか?」

「聞いてるってば……」


目を覚ました伊野尾はまた俺に絡む。

と言うより、仕事の相談をしつこくしてくる。


「じゃあ、どうしたらいいっすか!」

俺の肩を掴んでガンガン揺さぶってくる。

「おいっ!気持ち悪くなる……止めろっ!」

伊野尾も酔っているから力加減を知らない。

「伊野尾くん、兄貴が答えられないですよ」

松崎が間に入って、何とか揺れは治まった。

「あー、気持ち悪っ」

「教えて下さいよ、相葉くん」


先輩への気遣いを教えてやりたい。


「そのままでいいんじゃね?」

「もう、適当に答えないで下さい!」

「じゃあ、俺が『こうしろ!』って
言ったら言う通りにするのか?」

「そ……それは」

予想通り、口籠る伊野尾。


わかっていても少し傷つくぞ?

『相葉くんが言うなら間違いないです!』
という言葉があってもよくない?


まぁ、伊野尾の悩みも理解できる。


「キャラだとか色々と悩むけど、
今の伊野尾だからこそジャンプでは
経験できない仕事が来てると思うよ?」

メンバーがいると、
やっぱり誰かと比べちゃう。

そして自分が劣ってるんじゃないかって思う。


俺なんてメンバーでもある恋人がさ、
ビックリするくらい前を走ってるんだぞ?


「今はさ、ゴチャゴチャ考えずに
仕事を一生懸命頑張るしかないんじゃない?」


「そう…ですよね」

伊野尾はきっとアドバイスより
話を聞いて欲しかったり、
背中を押して欲しいんだと思う。


『大丈夫だよ』って……


俺もニノにいっぱい聞いてもらったし、
いっぱい背中を押してくれたからね。


いつの間にか俺も
背中を押す立場になったんだな……


「兄貴」

「ん、どうした?」

昔の事を懐かしんでいたら、
松崎がポンポンと肩を叩いた。

「スマホ……鳴ってません?」

慌ててポケットから取り出すと、
さっき懐かしんでいた出来事に
登場していた人からの電話だった。

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