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素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

「やっぱり予定……ありましたか?」

黙り込んでいる俺の様子に
どうやら用事があると勘違いしている。


ちょっとだけ……いいかな?


滅多にないニノの様子に
俺のイタズラ心に火がついた。


「んー、さっき伊野尾が
明日の予定聞いてきてたからね。
もしかしたらって思って……」


……ん?

受話口からは何の反応もない。


「ニノ、聞いている?」

「……予定聞いてきただけだよね?
まだ約束はしてないよね?」

「う…うん」

最初は不安そうな声色だったのに、
最後は強い口調で捲し立ててきた。

「じゃあ、俺が先じゃん。
伊野尾なんだからいいでしょ?後輩じゃん」

急に水を得た魚のように元気になるニノ。


しまった。

先輩の名前を出せばよかった。


慣れない事をするとボロがでるよな……


でも、先輩だったらニノは諦めちゃうか。


「相葉さん、聞いてます?」

「はいはい、聞いてますよ」

「じゃあ、ちゃんと返事して下さい」

すっかりいつも調子を取り戻したニノ。


まぁ、いっか。

いつもとは違うちょっと強引で諦めない
ニノからのお誘いを体験できたしね?


「はーい」


でも何より、会えるのが嬉しい。


「やっぱり酔っぱらってるでしょ?
急にテンション上がって気持ち悪い」

「おいっ!」

「兄貴ぃぃぃ、助けて下さーい!」

開いた個室のドアから出てきたのは、
伊野尾に後ろから抱きつかれている松崎。

「ほら、呼ばれてますよ?」


マジ伊野尾、空気を読んでくれ。


「悪い、あとで電話……」

「まだ飲むんでしょ?
相葉さんの電話を待ってたら寝れません」

「相葉くーん!」


おいっ、伊野尾……黙れっ!


「じゃあ、また明日」

「ちょっ、ニノ……うわっ!」

伊野尾が俺に勢いよく抱きついてきた。

「今日は帰れないと思いますよ?」


俺の返事を待たずに切れた電話。


そして言葉の通り、
俺は日付が回っても伊野尾に付き合わされた。

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