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素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

『俺も色々と準備があるから
夕方くらいの待ち合わせでいい?』

十分すぎる時間の猶予は有難い。


でも準備って……なんだ?


「うん。で、どこに行ったらいい?」

『いいよ、迎えに行くから』

「へっ?」


えっ?

今……何て言った?


『だから……迎えに行きます』


本当はめちゃくちゃ嬉しいんだけど……

年始早々、こんなにいい思いをしていいのか?


もしかしてこの後、
とてつもない事が起こるんじゃないのか?


「いやいやいや、いいよ」

『行きます』

「いいって」

『行きます』


変なころが頑固で、
こうなると絶対に引かない。


まぁ、俺もなんだけど……


「いや、俺が……」

『わぁぁぁぁぁ!』

突然、受話口から聞こえたニノの叫び声。

「痛ってぇ、いきなりなんだよ……」

ズキーンと二日酔いの頭に響き、
こめかみを指で押さえた。

『ほら、やっぱり……
昨日、飲み過ぎたんでしょ?
運転は危ないなら俺が迎えに行く』


そこまでお見通しって、ニノはエスパーか?


「じゃあ、頼むわ」


でもそこまでしてくれた
ニノの優しさを断るわけにはいかない。


それこそ、罰が当たる。


『でもインターホン押して
出なかったら速攻で帰るからね』

「もう、寝ないわっ!」

『どうだかねぇ?
じゃあ、もう切りますよ』

「うん。じゃあ、また後でね」

『……はい、また』

少し照れた声の後、
電話が切れた事を伝える機械音。

通話終了の画面を見ながらベッドに倒れ込む。

そして暗くなった画面に移るのは
頬が緩みまくった自分の顔。


ホントさ……

やり方が雑というか、素直じゃないんだよな。


でもそれがニノらしいし、
あとのツンツンした態度も精一杯の照れ隠し。


あぁー、早く抱きしめたいっ!


布団をかき集め、
ギュッと抱きしめながら目を……


やばっ、寝ちゃダメだ!


慌てて飛び起き、浴室へと向かった。

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