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素晴らしき世界

第6章 不思議な同居人

【二宮side】

大野さんとの外出。

きっとこれが最後になる……

こんなに近くにいるのに、会話は一方通行。

大野さんの返事は声でなくスマホの文字。

でも、家にいたら
こんなに近くで大野さんを感じられない。

メリットとデメリットが交差する。


俺が生きていれば、
デメリットなんてなかったのに……


スマホに目をやると

【買いたいものがあるからここで待ってて】

「わかりました」

俺の返事を聞いて、薬局へ入っていった。

ベンチに腰掛ける。

目線を下げると、また俺は消えていた。


ここで、消えるわけにはいかない……


暫くすると大野さんが戻ってきた。

俺の横に座り、スマホを操作する。

【食材、買いに行こうか?】

「はい、荷物多くなるけど大丈夫ですか?」

【平気、任せて】

「じゃあ、行きましょうか?」

横で必要な食材を伝え、
大野さんがかごの中へ入れていく。

かごいっぱいに入った食品をレジに通し、
袋に詰めてくれる大野さん。

「すみません、買いすぎて……」

帰り道大野さんに謝ると
首を横に何回か振った。

両手に荷物を抱えているから
スマホを操作できない。

そして理由はわからないが
大野さんの足取りは速い。

俺は嬉しかった。

どんな理由だとしても、
人目を気にすることなく過ごせる家に
早く帰れるのだから……

家に到着し、食材を冷蔵庫に入れていく。

大「たくさん買ったね」

「ざっと、一週間くらいは……」

大「二宮さんの料理、楽しみにしてる」

「ありがとうございます。
あっ、お昼御飯どうします?」

大「朝御飯が遅かったから大丈夫。
ごめん、少し調べ物してきていい?」

「気にしないでください。
俺も晩御飯の準備しますから」

大「ありがとう」

大野さんは寝室に入っていった。

「よし、やるぞ!」

俺は気合いを入れ、調理を開始。

作るのは今から一週間分の晩御飯。

もう、俺に残された時間は少ない。


少しでも大野さんの役に立ちたい……


無我夢中で料理していたら
あっという間に時間は過ぎた。

作り終えた料理を冷蔵庫へ入れる。

そして、テーブルに座り手紙を書く。

俺の精一杯の言葉……

手紙をポケットにしまい、
テーブルにうつ伏せになった。

ちょっと疲れたみたい……

ゆっくりと俺は目を閉じた。

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