
素晴らしき世界
第31章 向かい合わせ
『雅紀…っ』
俺を呼ぶ、俺の名を呼んで欲しい人の
声が聞こえた気がした。
思わず足を止めたけど、
後ろを振り返れる事が出来ない。
あくまでも『気がした』だけで確証はない。
だって……
翔が追いかけてくる理由がない。
何か忘れたわけでも、
ましてや俺に用事なんてあるはずかない。
みすみす振り返って、
また寂しくなるなんてまっぴらごめんだ。
「雅紀!」
一歩踏み出そうとしたら、
今度はちゃんと耳に届いた。
俺の名前を呼ぶ……翔の声。
振り返ると、離れた場所で
キョロキョロと辺りを見渡す翔の姿。
でもそれはとても小さかった。
「こ…っ」
呼びかけに答えようとした声と、
上げようとした腕を止めた。
翔がどんな理由で
俺を探しているのかはわからない。
でも、一つだけ言える。
ここで会ってしまえば、
益々俺は翔を諦める事ができなくなる。
俺はまた報われない恋を続けるの?
でも俺は……
翔に会いたい。
翔と話がしたい。
だったら……せめてきっかけは翔がいい。
なら、翔のせいにできるでしょ?
俺は祈るように
まだ辺りを見渡す翔を見つめた。
ねぇ、翔……俺を見つけてよ?
「雅紀っ!」
遠くで立ち止まる俺に気がついて、
翔が全速力で走ってくる。
こんな風に俺の元へ走ってくるなんて初めて。
だってずっと俺が追いかけて来たんだ。
「はぁ…はぁ…」
俺の前で前屈みになり、
膝に手を当てて呼吸を整える翔。
「よかっ…た」
苦笑いを浮かべ、
額に汗を滲ませながら俺を見上げる翔。
やっぱり……カッコいいな。
って、ダメじゃん。
もう完全に翔に堕ちてる。
「大丈…夫?」
取りあえずポケットから
ハンカチを取り出して
額の汗を拭おうと手を伸ばした。
「大丈夫……じゃない」
パシッとその手を掴まれた。
ちょっとだけ……痛い。
「走り過ぎて喉カラカラ。
もし良かったら……お茶しない?」
俺を呼ぶ、俺の名を呼んで欲しい人の
声が聞こえた気がした。
思わず足を止めたけど、
後ろを振り返れる事が出来ない。
あくまでも『気がした』だけで確証はない。
だって……
翔が追いかけてくる理由がない。
何か忘れたわけでも、
ましてや俺に用事なんてあるはずかない。
みすみす振り返って、
また寂しくなるなんてまっぴらごめんだ。
「雅紀!」
一歩踏み出そうとしたら、
今度はちゃんと耳に届いた。
俺の名前を呼ぶ……翔の声。
振り返ると、離れた場所で
キョロキョロと辺りを見渡す翔の姿。
でもそれはとても小さかった。
「こ…っ」
呼びかけに答えようとした声と、
上げようとした腕を止めた。
翔がどんな理由で
俺を探しているのかはわからない。
でも、一つだけ言える。
ここで会ってしまえば、
益々俺は翔を諦める事ができなくなる。
俺はまた報われない恋を続けるの?
でも俺は……
翔に会いたい。
翔と話がしたい。
だったら……せめてきっかけは翔がいい。
なら、翔のせいにできるでしょ?
俺は祈るように
まだ辺りを見渡す翔を見つめた。
ねぇ、翔……俺を見つけてよ?
「雅紀っ!」
遠くで立ち止まる俺に気がついて、
翔が全速力で走ってくる。
こんな風に俺の元へ走ってくるなんて初めて。
だってずっと俺が追いかけて来たんだ。
「はぁ…はぁ…」
俺の前で前屈みになり、
膝に手を当てて呼吸を整える翔。
「よかっ…た」
苦笑いを浮かべ、
額に汗を滲ませながら俺を見上げる翔。
やっぱり……カッコいいな。
って、ダメじゃん。
もう完全に翔に堕ちてる。
「大丈…夫?」
取りあえずポケットから
ハンカチを取り出して
額の汗を拭おうと手を伸ばした。
「大丈夫……じゃない」
パシッとその手を掴まれた。
ちょっとだけ……痛い。
「走り過ぎて喉カラカラ。
もし良かったら……お茶しない?」
