テキストサイズ

素晴らしき世界

第31章 向かい合わせ

【2年後】


「ただいまー」

いつもは迎え入れる立場だけど、
今日は迎えられる立場。

「おかえりー」

でもこうやって
帰ってきて誰かがいるってのも嬉しい。

「寒かっただろ?コーヒー飲む?」

普段立つことの無いキッチンで、
俺を出迎えてくれた。

「ありがとう。でも今日は……
ホットミルクが飲みたいな」

「ホットミルク?俺、作れる?」

「ふふっ、ちょっと砂糖入れて
温めるだけだから大丈夫だよ」

「じゃあ、俺も飲んでみよっかな」

冷蔵庫から牛乳を取り出して、
マグカップに注いでいく。

「これも貰って来たし、一緒に食べない?」

持っていたケーキ箱を翔に見せた。

「食べれるか?
昨日もあんまり食欲無かっただろ?」

前髪を横にかき分けると
顔を近づけてピタッと額をくっつける。


こうやって心配してくれるなら、
病気するのも悪くないかなって思っちゃう。


これからは色々と介抱してくれるのかな?



「熱は……ないな」

「大丈夫だって。これなら和也さんも
食べれるって教えてくれたし」

「なんかよくわかんなけど、
食べれる事に越したことはないからな」

俺の髪をクシャっと撫でると、
差し出していたケーキの箱を受け取った。

「じゃあ、手を洗ってくるね」

「ちゃんとうがいもしろよ」

「ふふっ、それ俺のセリフでしょ?」

いつもと違うやりとりに自然に零れる笑み。

「一回、言ってみたかったんだよな」

クスッと笑って2つのマグカップに
砂糖を入れるとレンジに入れる。





俺は洗面所に向かうと鏡を見つめた。



ホント俺、幸せな顔してるな……



油断したら緩みそうな頬を軽く叩いた。


翔と再会して、デートを何回も重ねた。

半年ぐらいで翔と別れるまでにした
デートの回数をきっと超えていたと思う。


本当はもっと俺を
追いかけて欲しかったんだけど……

結局は我慢できなくって
『好きだ』って昔の様に俺から告白した。


でもそれでよかったと思う。


その分、幸せの訪れは早くなったから……

ストーリーメニュー

TOPTOPへ