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素晴らしき世界

第31章 向かい合わせ

【そのまた半年後】







「大野さん、ありがとう」

「ありがとうございます」

椅子から立ち上がると、お腹が少し大きくなった
相葉くんの身体を支えて寄り添う櫻井さん。


って、両方櫻井なんだよな……


まだ『相葉くん』と呼んでいる自分に、
案外引きずっているのかなって凹みそうになる。



俺が二宮くんのお見舞に行った時に、
相葉くんはずっと忘れる事ができなかった
櫻井さんと偶然に再会した。


その時、すぐにわかった。

櫻井さんもまだ、相葉くんを好きだって……



だって俺も相葉くんが好きだった。


あの日、本当は
相葉くんに告白するつもりだった。


もちろん振られる事はわかってた。

櫻井さんをまだ好きだったし、
何よりも相葉くんと俺はずっと友達だったから……

友達から始まる恋が上手くいかない事を、
相葉くんは身を持って知っている。


でも俺は……

違うんだって証明をしたかった。


櫻井さんの事を話す時に悲しい顔を見せる
相葉くんを笑顔にしたいって思ったし、
俺なら笑顔に出来るって思った。

だからこそ俺は中途半端な気持ちで
相葉くんを追いかけて期待を
持たせて欲しくなかった。

これ以上、相葉くんを苦しめて欲しくなかった。

俺にしては珍しく男気を見せたんだけど、
それが櫻井さんの心に火をつけたみたいだ。


でも……俺だって真剣だ。


だからこそ俺も櫻井さんと別れた後に
相葉くんに会ったんだ。

けど目の前の相葉くんは
さっきまで辛そうに櫻井さんの事を
話してた時の面影はなくて……


俺が今まで一緒に過ごしてきた中で
見たことのない笑顔を見せたんだ。


ケーキを食べて笑う相葉くんでもない。

下らない話に笑う相葉くんでもない。


心から嬉しそうに、
そして幸せそうに笑う相葉くん。


どんなに頑張っても引き出すことが
出来なかった笑顔を櫻井さんは
意図も簡単にやってみせた。



相葉くんを幸せにするのは……俺じゃなかった。

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