素晴らしき世界
第31章 向かい合わせ
「今月も営業成績、1位ですね」
後ろ振り返ると、プーッと
頬を膨らませて拗ねて見せる二宮くん。
「可愛くねーぞ」
頬を指で摘まんで空気を抜いてやった。
「仕方ないだろ。
ぜひ俺にって言ってくれたんだから」
「わかってますよ。
それがなかったら俺が請け負ってます」
二宮くんは産休を終え、
俺の務めている支店に異動してきた。
ブランクを感じさせない接客と、
可愛いと評判の営業スマイルで
グングンと成績を伸ばしている。
完全なる計算だと……俺は思う。
「あっ、大野!ちょっといいか?」
「はい」
課長に呼ばれてデスクに向かうと、
見慣れない姿があった。
「紹介するな。明日から
ここで働くことになった加藤だ」
「加藤です。よろしくお願いします」
声がハスキーで大人っぽいけど、
童顔で俺に向けた笑顔は可愛らしいという印象。
こいつも接客をマスターしたら、
営業成績の上位に食い込んでくるだろうな。
って俺も、そんな風に考える立場になったのかな。
「明日から教育係を頼むぞ」
「えっ?俺っすか?だって今年は二宮がって……」
俺が見る事を予想していたのか、
目が合うとニヤニヤしながらこっちに歩いてくる。
「いや、そのつもりだったんだが……」
「すみません、大野さん。
俺実は……子どもができたんです」
隣に来るとコソっと俺に耳打ちをしてきた。
「はぁ?マジかよ……」
どうして俺の周りばっかり幸せが訪れるんだよ。
みんな俺の幸せを吸い取ってんじゃねーのか?
「あの……大野さんって釣り、するんですよね?」
「あー、そうだけど」
よくあるご機嫌伺いかと思って投げやりに答えた。
「俺も釣り……するんです」
「嘘っ、マジ?」
なかなか趣味を共有できる人がいなくて、
下がっていたテンションが一気に上がった。
「マジです!良かったら今度、行きませんか?」
「おう、行く行く!明日、行こう!」
「はい、ぜひ!」
「おーい、明日は仕事……」.
課長の言葉を無視して
俺たちは明日行ける釣り場を探した。
俺に訪れた些細な幸せ。
これが大きな幸せに繋がっていくのは
まだまだ……先の話。
【end】
後ろ振り返ると、プーッと
頬を膨らませて拗ねて見せる二宮くん。
「可愛くねーぞ」
頬を指で摘まんで空気を抜いてやった。
「仕方ないだろ。
ぜひ俺にって言ってくれたんだから」
「わかってますよ。
それがなかったら俺が請け負ってます」
二宮くんは産休を終え、
俺の務めている支店に異動してきた。
ブランクを感じさせない接客と、
可愛いと評判の営業スマイルで
グングンと成績を伸ばしている。
完全なる計算だと……俺は思う。
「あっ、大野!ちょっといいか?」
「はい」
課長に呼ばれてデスクに向かうと、
見慣れない姿があった。
「紹介するな。明日から
ここで働くことになった加藤だ」
「加藤です。よろしくお願いします」
声がハスキーで大人っぽいけど、
童顔で俺に向けた笑顔は可愛らしいという印象。
こいつも接客をマスターしたら、
営業成績の上位に食い込んでくるだろうな。
って俺も、そんな風に考える立場になったのかな。
「明日から教育係を頼むぞ」
「えっ?俺っすか?だって今年は二宮がって……」
俺が見る事を予想していたのか、
目が合うとニヤニヤしながらこっちに歩いてくる。
「いや、そのつもりだったんだが……」
「すみません、大野さん。
俺実は……子どもができたんです」
隣に来るとコソっと俺に耳打ちをしてきた。
「はぁ?マジかよ……」
どうして俺の周りばっかり幸せが訪れるんだよ。
みんな俺の幸せを吸い取ってんじゃねーのか?
「あの……大野さんって釣り、するんですよね?」
「あー、そうだけど」
よくあるご機嫌伺いかと思って投げやりに答えた。
「俺も釣り……するんです」
「嘘っ、マジ?」
なかなか趣味を共有できる人がいなくて、
下がっていたテンションが一気に上がった。
「マジです!良かったら今度、行きませんか?」
「おう、行く行く!明日、行こう!」
「はい、ぜひ!」
「おーい、明日は仕事……」.
課長の言葉を無視して
俺たちは明日行ける釣り場を探した。
俺に訪れた些細な幸せ。
これが大きな幸せに繋がっていくのは
まだまだ……先の話。
【end】