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素晴らしき世界

第37章 キミのとなり

「はぁー」

カードキーをピッと差し込むと、
俺の大きな溜め息はかき消された……

はずだった。

「溜め息、デカっ!」

「うえっ?」

ビックリして振り返ると
すぐ後ろにニノが立っていた。

「お邪魔しまーす」

俺の横をスッとすり抜けて
開けたドアから部屋へと入っていった。

「……どーそ」

見える背中に返事をしつつ、
俺も部屋へと入っていく。

「はい、飲むでしょ?」

我が物顔で冷蔵庫から
缶ビールを出すと俺に差し出した。

「あ、うん……どーも」


受けとる俺も俺だけど……


ニノはそそくさと
プルタブを開けてビールを飲む。

「乾杯くらいしようよ」

「さっきしたでしょーが」

それを言われたら返す言葉もない。

「いただきまーす」

「どーぞ」

もはやここはニノの部屋になってる。


でもそんな振る舞いも慣れたものだし、
ムカつくという感情も起こらない。


いつもの事。

そう思えるくらいジュニア時代から、
ずっと一緒に過ごしてきた。


夢のまた夢だと思ってたデビュー。

一握りもないチャンスを掴み取り、
『嵐』というグループのメンバーとして
ニノと俺は今でも一緒だ。


昔に比べたらバカやったり
遊んだり会話する機会は減った。

大人になったし……

友達、親友からメンバーへと
関係性が変われば仕方のない事。

それが寂しくないと言えば、
嘘になるかもしれない。


でも今日みたいに俺の些細な変化を
察知してくれるはニノだけ。

なんでだって言われたら……

『ニノ』だからっていう理由しかない。


「……ありがと」

「何か、言いました?」

「別に」

ポツリと呟いたけど、
きっとニノは聞こえてた。


でもこうやって
聞こえてないフリするのも……

『俺は何も気がついてません』
って態度を見せるのも……


ニノの優しさ。


そんな優しさに俺はずっと助けられてた。

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