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素晴らしき世界

第37章 キミのとなり

「ちょっと悪酔いしたみたいなんで帰ります」

サッと立ち上がって帰ろうとする
ニノの手を咄嗟に掴んだ。


俺はニノみたいに気持ちを
察知するなんて事は出来ない。

直感だったり身体が勝手に動く。


今も……

ニノを帰しちゃいけないって。


「……離して下さい」

「やーだね」

「うわ…っ」

グッと引っ張って再び腰を下ろさせた。

「何するんですか!」

「今日はトコトン、付き合ってもらうからね」

「何で俺が……」

「散々、ニノのワガママ聞いてきたんだよ?」


本当はワガママだなんて思った事は一度もない。

インドア派なんて言ってるけど、
結局は構ってちゃんだし……

でも相手ってのはごく一部で、
その中に自分がいるってのは嬉しい。


特別な存在って……感じじゃん?


「だからたまには俺のわがまま聞いてよね」

ワザと頬を膨らませて拗ねて見せた。


そんな風に思ってないけど……

こう言えばきっとニノはここにいやすくなる。


言い訳を『俺のせい』にできるからね?


「可愛くないです。寧ろキモイ」

「おい、スーパーアイドル相葉ちゃんだぞ」

「どこにアイドルがいるんですかー?」

俺から視線を外すと、
辺りをキョロキョロ見渡した。

「ここにいるだろーが!」

両頬を手で包んでこっちを向かせると、
パチッと目が合った。


その瞬間、なぜか時が止まった気がした。


そしてお酒の影響で
少し赤くなった潤んだ瞳に
静かに吸い込まれていく感覚。


また……直感。


顔をゆっくりと近づけると、
ニノの唇に優しく触れる。


なんでとか、
どうしてかとかはわからいけど……


唇を離すとテーブル越しに
そのままニノをギュッと抱きしめた。

ニノもなにも言わないで、
俺の行動を受け入れてくれている。

このおかしな状況について
俺もニノも考えるべきなんだけど……


今はただニノから伝わる温もりを
感じでいたかった。

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