素晴らしき世界
第39章 愛と浮気のチョコレートケーキ
『かんぱーい!』
松にぃの声でみんながグラスを上げる。
「ありがとうございます」
俺はみんなに軽く頭を下げる。
本当は和也と2人で誕生日を過ごしたかったけど……
『皆さん、じゃんじゃん食べてくださいね』
テーブルには和也が作ってくれた料理が大量に並ぶ。
『いっただきまーす!』
一目散に相葉くんが、から揚げに箸を伸ばす。
普通、主役から食べるでしょ。
でも、言えない。
俺の勘違いで迷惑をかけたから、みんなも誘ってお祝いしようって和也が言った。
迷惑はかけたけどさ……
元はといえば、松にぃと相葉くんがややこしい言い方するからあんな事態になったんじゃん。
『智、早く食べないと無くなるぞ』
そういって春巻きに手を伸ばす松にぃ。
そう言って責めたら俺……殺されるよな?
「ありがとうございます」
「主役がお礼言うって、変じゃない?」
クスクスと潤が笑ってる。
だって、反射的にお礼が出ちゃうんだもん。
「櫻井さんも、食べてくださいね?」
和也が出来た料理を持ってくる。
「お邪魔して良かったの?」
『もちろん、人数は多い方が楽しいですから。岡田さんも遠慮しないで食べてくださいね』
『はい』
1番の迷惑をかけた櫻井さんを呼ばないわけにはいかなかった。
でも、空気を読んで欲しい。
あんな場面見たからわかってるはずじゃん、俺らの関係を。
だったらさ……遠慮しろよ。
嫌味の一つも言ってやりたいが、チョコレートケーキの作り方を教えてくれたのはコイツ。
それに何より岡田ってやつが、がっちりガードしてるから近づけない。
服を着ててもわかる鍛えられた肉体はビビる。
俺は主役なのに肩身の狭いまま、和也の作った料理に箸を伸ばした。
『美味しいですか?』
料理を終えた和也がエプロンを外し、俺の隣に座った。
「もちろん、美味しいよ」
そう言うと、和也は嬉しそうに笑った。
暫くするとお酒の入った松にぃがみんなに絡んでいく。
そして岡田さんにも絡んでいく。
ヤバいと思ったけど、松にぃが怖くて誰も止められない。
どうなるかと思ったけど、それがきっかけになって岡田さんも俺たちの輪に入ることが出来た。
みんなの笑い声が響くリビング。
まぁ、こんな誕生日も悪くないな。