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素晴らしき世界

第40章 一年で一番可愛い日

山の日を迎えた。


目を覚ますと、隣で寝ていた和也はいなかった。

リビングに向かうと、探していた人はキッチンに立ってる。

何かを焼く音と鼻孔をくすぐる匂いが、俺の腹の虫を呼び覚ます。

「おはよぉ。腹減った……」

『おはようって……もうお昼だよ?』

クスクス笑う和也に近づき、後ろからギュッと抱きしめた。

「和也だって、起きたばっかりでしょ?」

ピョンと跳ねた髪を撫でる。

『翔だって髪の毛、爆発してんじゃん!』


クルっと振り返った和也の顔が目の前に……

思わずその薄い唇にキスを落とすと、見る見るうちに和也の顔が紅に染まっていった。

『もうすぐご飯できるから……早く顔洗ってきて!』

バタバタと暴れて、抱きしめていた俺の腕から逃れる。

「はーい」

洗面所に入る前に静かに振り返ると、和也が鼻歌交じりにサラダを盛り付けていた。


ホント、天邪鬼だよな。


思わず緩んでしまった頬を引き締めるように、冷たい水で顔を洗った。


そして和也の作った料理を食べ、テレビの前のソファーに座った。

暫くすると、片づけを終わった和也も俺の隣に座る。



準備は整った。



「今日はどうする?」


これは……いつもの会話。


『うーん、祝日だし……外に出るのは難しいんじゃない?』

「そうだな……って、いつも家じゃん」

『だって家が一番だもん。ねぇ、ゲームしよ?ゲーム』


いつもと違う会話、行動。


ゲームの前に見るものあるじゃん。


「その前に、あれ見なくていいの?」

『えっ?』

充電していたコントローラーを取ろうとした和也の手が止まった。


目の前に置いておいたリモコンを操作する。


ある番組名の前には『未』の表示。


「見てないじゃん。ほら、座って?」

ポンポンとソファーと叩くと、コントローラーを持たずにトボトボと戻ってきた。


和也……どんな反応するかな?

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