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素晴らしき世界

第40章 一年で一番可愛い日

テレビ画面から流れるのは『PON』

和也は放送を欠かさず録画している。

和也は自称ジャニっPON!の心のレギュラー?顧問だからな。


2人で過ごす時に一緒に見ることも少なくない。


いつも青木さんのジャニーズの情報網に俺たちは感心しっぱなしだ。


その情報網が、昨日の放送を見るのを避けている。


『明日は山の日です。山の日と言えば……嵐ファンの皆様、お待たせしました!』

青木さんの明るい声と満面の笑みが映ると、触れ合っていた和也の肩がピクっと震えた。


青木さんがこの日を伝えない筈がない。

俺の予想は見事に当たった。


『大野さんと櫻井さんの日です』

声高らかに画面の嵐ファンに向かって伝える。


『なんでやねん!』

岡田さんやビビるさんのツッコミを諸共せず熱弁する青木さん。

『それでは青木厳選、とっておき映像……ご覧ください』

映し出される映像はライブの様子。


俺はじゃれているだけなんだけど、ファンにとっては『萌え』なシーンみたい。

ワイプに映る青木さんの表情が、どんどん崩壊していってる。


和也は……どうなんだろう?


チラッ横目で確認すると唇を尖らして、ずっと流れる映像を見てる。

膝に乗せている真ん丸な手は力が入り、ギュッと握られている。


ふふっ、拗ねてる拗ねてる。


そして映像が終わった瞬間、大きな溜め息が聞こえた。


どうした、どうした?


『翔……』


よし……来たっ!


どんな言葉が出るんだろう……

どんな表情をしているんだろう……


「ん?どうし……」

予想していない事態に俺は言葉を失った。


和也の目から涙がポロポロと零れ落ちた。


「和也、どうした?」

頬に手を伸ばして、流れ落ちていく涙を何回も拭った。

『やっぱり翔さんの隣は俺じゃなくて……大野さん……なんだよね?』

潤んだ真っ赤な瞳で俺を見つめた。

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