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素晴らしき世界

第7章 優しいサンタクロース

「これ、あげようか?」

紙袋を差し出した。

「ホントに?」

目を輝かせて、
とびきりの笑顔を俺に向ける。

「俺たちからのクリスマスプレゼント」


俺と和からの……


「ありがとう、おにいちゃん!」

女の子が紙袋を受け取ろうとしたとき

「お客様、お待ちください!」

店員さんがいきなり割って入ってきた。

「少し、ケーキをお預かりしていいですか?」

呆気に取られつつ、紙袋を渡すと
厨房へ入っていった。

暫くすると店員さんが戻ってきた。

「お客様、お待たせしました」

店員さんが俺に紙袋を差し出すので

「ほらっ、受け取りな」

隣で待っていた女の子の背中を押した。

「ありがとう」

嬉しそうに紙袋を受け取った。

「本当にありがとうございます。
あのっ、お金を……」

「いいですよ。
クリスマスプレゼントですから」

「ママ、はやくかえろっ!」

「ありがとうございます」

「おにいちゃん、バイバーイ」

お母さんの手を引いて帰っていった。

親子を手を振って見送り、
店を出ようとしたら

「二葉様」

店員に呼び止められたので、
振り返ると小さな紙袋を差し出した。

「これをお持ち帰りください」

「えっ?受け取れないですよ!
気持ちだけで十分です」

「いえっ、これは二葉様に
持ち帰っていただきたいんです」

「俺にですか?」

「はい」

「じゃあ、遠慮なく頂きます」

「いえ、こちらこそ
色々とありがとうございました」

店員さんが深々と頭を下げた。

俺は店を出て、車に戻った。

「ケーキ、どうしよう……」

小さな紙袋を助手席に置いて
とりあえず車を走らせた。

帰り道にあるコンビニやスーパーに
片っ端から入り、ケーキを探した。

でも、どこも売り切れで……

結局、小さな紙袋だけ持って家路に着いた。

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