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素晴らしき世界

第14章 可愛すぎる理由

観覧のお客さんの声援を背に
スタジオを後にする。

「ねぇ、翔くん」

スタッフと談笑していたら
潤が小声で俺を呼んだ。

いつもなら気を使って
声をかけることなんてないのに……

何かあったのか?

「すみません、お疲れ様です」

スタッフに挨拶し、潤に駆け寄る。

「どうした?」

「大野さん、大丈夫?」

「えっ?」

「収録中、ボーとすることはよくあるけど
いつもと違う感じがして……」

そう言えば、
ピンボールランナーが終わったあと
いつもより息切れが激しかった。

本番前の智の様子を思い出す。

少し赤かった頬……
覚束無い足取り……

「翔さーん」

楽屋の方からこっちに走ってくる
ニノの姿が見えた。

「智のことだろ?」

「さすが恋人のことになると勘がいいね。
早く行ってあげて……」

何で早く気が付かなかったんだ……

でも反省は後だ。

俺は急いで楽屋に戻った。

ドアを開けると智が
ソファーで横になっていた。

荒い吐息が事態の深刻さを表していた。

「智」

俺は智の顔の横にしゃがみ込む。

「……翔」

ゆっくりと首を動かして俺を見ると
額に乗せられた濡れたタオルがズレ落ちた。

「無理しないで……」

濡れたタオルを額に戻し、手で押さえた。

「ごめん……」

一筋の涙が溢れ落ちた。

謝るのは俺の方なのに……

「翔ちゃん、これ」

息を切らしながら相葉ちゃんが
ミネラルウォーターを差し出した。

「これ、帰ったら飲んで」

潤が小さなポーチから薬を出した。

「さすが、薬箱潤だな……」

「余裕ないんでしょ?無理しない」

「ありがとう」

するとニノが楽屋に戻ってきた。

「収録後のクイズのやつ、
俺と交代できたから翔さん送ったあげて」

「いやっ、それは……」

仕事はちゃんとしなきゃ……

「こんな時くらい、
公私混同したってバチは当たらないよ。
あとは、俺たちに任せて?」

相葉ちゃんも松潤も頷いてくれた。

「わりぃ、借りは必ず返すから」

「当たり前でしょ!何奢ってもらう?」

「やっぱ、焼き肉っしょ!」

「いや、中華だね!」

三人なりに気を使ってくれてるのがわかった。

やっぱり、みんなに伝えて良かった。

智……

みんなの気持ち届いてる?

こんな優しいメンバーに
ヤキモチ妬く必要なんてないんだよ……

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