テキストサイズ

素晴らしき世界

第14章 可愛すぎる理由

【翔side】

寝室ををそっと開けると
智がベッドから起き上がっていた。

「智、大丈夫?」

声をかけても反応がなかった。

布団に落ちているタオルを
ジッと見つめている。

思いつめた表情をしていることは
ここからでもわかった。

俺はゆっくりと近づき、
ベッドの端に腰かけ智の額に
そっと手を当てた。

「わっ!」

俺の手にビックリして
身体を震わせた。

「薬が効いたみたい。熱、引いてる」

「薬?」

「松潤がくれたんだ」

「いつ飲んだの?覚えてない……」

「智、意識が朦朧としてたからね」

俺は顔を耳元に近づけ、

「口移しで、飲ましたの」

「えっ?」

智は驚いて身体を後退させた。

真っ赤になった智の顔が可愛かったが
すぐに表情が曇った。

「翔、仕事残ってたよね……」

「それはニノが交代してくれたよ。
だから心配しないで」

俺の言葉に智は何も答えないで
下を向いている。

「智?」

智の顔を覗き込もうとしたときに
不意に掌に触れた。

その掌は濡れていた。

「どうした?」

両手で頬を包んで、上を向かせると
涙が頬を伝って流れていく。

「ううっ…ごめんっ…なさい」

「どうして謝るの?」

「俺っ…最低…だから」

嗚咽交じりに智が話を続ける。

『そんな事ないよ』って
言って抱きしめたかったけど
ちゃんと聞かないといけないと思った。

「俺、ずっと嫉妬してた。
翔を取られるんじゃないかって……
メンバーなのに……
信じることが出来なかった」

俺は返事の代わりに
智の背中をゆっくりと撫でた。

「そんな俺に、
みんな親身になってくれて……」

またポロポロと涙が溢れてくる。

「翔みたいに、
きちんと仕事とプライベートの
切り替えが出来ないよ……」

どんどん智の顔が
身体ごと下がっていく。

「きっと、これからもっと
メンバーにも翔にも迷惑かけちゃうよ……」

言い終わると、
智は顔を布団に埋めた。

俺は不謹慎だけど、
智の言葉が嬉しかった。

言葉のすべてに智から俺への『好き』が
たくさん詰まっていたから。

俺のことが好き過ぎてメンバーでさえも
嫉妬しちゃうんだよね?

俺のことを好き過ぎて
仕事中もメンバーじゃなくて、
恋人として見ちゃうんだよね?

俺のこと好きすぎて、
迷惑かけちゃいけないって思うんでしょ?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ