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金魚鉢の金魚

第1章 金魚鉢の金魚

「それは違うよ。周りが出目金のよさに気づいていないだけ」

「嘘つき。翔ちゃんだって出目金、飼うの渋ったじゃない」

「それは、餌の食いつきを心配しただけ。でも、よく見ていてあげたらいいことだから飼ったの。確かに花は出目金みたい。けれど、それはキモチワルイじゃない。花はね、出目金みたいに目が離せない。それに……ほら、見てみ? 出目金がいるから琉金の赤はより輝いている」

 翔ちゃんの言葉で金魚鉢の二匹を見る。本当だ。

「――キレイ」

「だろ? それに花は逃げてなんかいない。ちゃんと戦ってる。泣き虫だけど、それでも逃げ出したりせず戦ってる。俺が辛いときだって支えてくれた。今日だって俺の為に料理をして待っていてくれた。俺は花がいるだけでいい。俺の為に一生懸命に頑張ってくれている花が好き。じゃなかったら結婚しようなんて言わない」

 翔ちゃんがまた大きな手で私の頭を撫でてくれるから、また涙が零れ落ちた。今度は悲しいんじゃない。嬉しいんだ。

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