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金魚鉢の金魚

第1章 金魚鉢の金魚

「無理してオトナになんてならなくていい。花は花のままで。花はそのままが美しい。誰よりも――」

「ありがと」

 今度は、心の底から微笑んだ。

「さっ、分かったら一緒にご飯食べよ! もう、俺、お腹ペコペコ」

 翔ちゃんは笑っていつもの翔ちゃんになった。普段は甘えたがりで弱いところもある翔ちゃんだけど、いざとなれば頼りになる大人な人。世界で一番愛している人。こんな人の奥さんになれること。それはきっと何にも代えられない幸せ。

 翔ちゃんの言葉でスッと心が軽くなった。私は私のままで。

 翔ちゃんと私以外の誰が認めなくても、小さな黒い出目金は何よりも美しい――。

              End.
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