キョウダイ
第1章 幼馴染み
「ねぇ、葵ちゃん。俺とちゃんとお付き合いしてみない?」
学校の帰り道。
幼馴染みの周防 明が言った。
いつもは同じクラスの池田 真理も一緒に帰るんだけど、今日は家の用事があるからと先に帰っていた。
小学校からの仲良し三人ぐみ。
しょうがないから二人でアイスクリーム食べて、帰ろうとしたところ。
明が急に軽く言った。
アイスクリームを食べてたあたしは一瞬目が点になる。
同じようにチョコレートのアイスクリームを食べている、明の顔をまじまじと見つめる。
はっきり言って明は格好いい。
背も高いし、モテるし。
たくさんの貢ぎものを学校で女の子達からもらってるのは知っている。
チャラいし、軽い。
いろんな女の子ともお付き合いしてたのも知っている。
「えっと、なんなの?いろんな女の子と付き合いすぎて、ネタギレとか?」
とりあえず。
冗談ぽく言ってみる。
でも半分本気で思ってるから。
「……やっぱり、そう思う?」
明はおおげさに溜め息をつく。
少し先に歩いていたのに足を止めて振り返る。
気持ちいい春の風が彼の黒い髪を揺らし、それをかきあげ髪の隙間から見える瞳が、妙に艶っぽく見えた。
「こんな事言っても信じられないだろうけど、俺は昔から葵ちゃんが好きなんだけどね?」
「いやいや、信じられないよ、それはっ」
かぁっと、顔が赤くなるのを感じる。
「葵ちゃんちのキョウダイがみんな邪魔するし、幼馴染みだからそう思うのかなと思って、いろんな女の子とも付き合ってみたけど……、やっぱり葵ちゃんがいいみたい」
「キョウダイが邪魔する?」
あたしはアイスクリームを食べながら首を傾げる。
確かに家にはキョウダイがいる。
1つ年下の弟と、1つ年上の兄、大学生の兄と皆、男の子だ。
「それは子供の時の話でしょ?」
アイスクリームを食べながら笑う。
明はアイスクリームを食べ終えてた。
皮肉っぽく苦笑いしている。
「邪魔っていうより、牽制みたいな。今も昔も……因みにお前に言い寄る奴はみんなだよ」
「えぇっ?うそだぁ?」
アイスクリームの最後の一口を食べて笑うあたし。
「昔から思ってたけど、葵ちゃんって鈍いよね。」