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キョウダイ

第1章 幼馴染み




むむむっ。

「呑気だし、不器用だし……」

ずずいっと、明があたしに近付く。

いつの間にか家の玄関前に来ていた。

「そんな可愛い子を、俺がほっとくわけ、ないでしょ?」

壁に背中がつく。

明の端正な顔立ちに太陽の光がかかり、その黒い瞳がぎらりと光った。

頭の中で警鐘が鳴る。

こんな表情見たことない。

「好きなんだ。葵ちゃん……」

あたしの長い髪を耳にかけてくれた。

そんな仕草が妙に色っぽくてドキドキして。

少しほっとした自分がいた。

たまらなくなって俯く。

くすっと、笑う気配がした。

「ごめんね」

グイッ、髪を引っ張られ、痛みに顔をあげる。

「いたっ!」

そこに明の唇が降ってきて、唐突に唇が重なった。

甘いアイスクリームの味がした。



「んんっ!……なっ……にっ!」




抗議しようと唇の隙間から声をだす。


だけどそこから今度は明の舌があたしの口の中に侵入してきて、あたしの舌に絡み付く。




「んんっ〜っ!」




じたばた暴れるあたし。




いつの間にか鞄を落としてるし、両手をがっちり掴まれている。




なんでこんな急に、キスするのっ?




あたしの頭の中はパニック。




はじめてのキスに翻弄され、舌先からの痺れるような感覚に頭がぼうっとなる。




その時。




ばんっ!




家の玄関のドアが乱暴に開いた。




その衝撃の音に驚いて、明がパッと離れてくれた。




「よう、明。なにやってんだお前は?」



そこに現れたのはあたしの1つ年上の兄、海斗だった。

お母さん似の綺麗な顔立ち、色素の薄い茶色い瞳が、明を真っ直ぐに睨んでいる。

切れ長の瞳がぎらりと光った。

ゆらりと、怒りのオーラを纏っている。

ひぇっ!

怖い。

「海斗、帰ってたんだ。ああ、ごめんね。でも俺たち今度から付き合うようになったんでよろしくね、お兄さん」

明〜!

にっこり笑ってしゃあしゃあと、言ってのける。

はあ!?

と思ったんだけど。

「ああ?」

ぎろり。

あたしの顔を睨みつける海斗。

海斗は気が短く、喧嘩っ早い。

因みに子供の時から空手を習っている。

部活も空手部なんだけど、今日は試験が明日あるから休みなんだった。

思わず、あたしは頷いた。

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