キョウダイ
第14章 陽だまりの優しさ
ちっと舌打ちして、乱暴に明の手を離す。
「なんで止めるの?」
明があたしを見つめる。
だって、海斗に殴られたら、今だって苦しそうだったのに……。
「殴られただけで、俺が死ぬとでも思った?」
「そんなことっ……!」
「もういい!行くぞ、葵!」
海斗が庇うように、あたしと明の前に立ちはだかる。
そのまま、片手で体を起こされる。
「明、彼氏だって言うような奴が葵を泣かすんなら、お前には任せられねぇよ」
睨み合う二人。
「結局いつもお前が葵を連れていくんだね?」
皮肉気に笑いながら明が呟く。
「当たり前だろ。帰るぞ」
あたしを振り返り、強引に引っ張って行く。
ふらつきながら、その広い背中について行く。
理科室に残される明を振り返る。
目が合ったのに、ふいとそっぽを向かれる。
その表情が、何故だか気になった……。
なんて言葉をかければいいのか分からなくなっていた。