キョウダイ
第15章 守られる愛
海斗があたしの手を黙って引っ張って歩く。
首から下げているタオルで、あたしの顔を不器用なしぐさで拭いてくれる。
涙であたしの顔がぐしゃぐしゃだった。
気付いた瞬間、新しい涙が零れる。
空手部の部室に近付いていた。
みんなに会えない。
結局あたしは着替えてなく、制服のままだし。
タオルをあたしの頭の上に被せて、海斗が男子の部室に引っ張る。
えっ?
「着替えて家に帰ろう」
相変わらず、短い説明。
男子の更衣室でもある部室にあたしを引っ張って行く。
「誰もいないから」
部室を開ける、中へと引っ張られる。
はっきり言ってあんまり片付けてない様子。
男の子の薫り。
汗とコロンかな?
傍にあるイスにあたしを座らせて、着替えはじめる海斗。
片手でTシャツと短パンを器用に脱いでいる。
怪我しているから、さすがに胴着は着ないのかな?
引き締まった体に、汗をかいてるからか、タオルで拭いている。
片手でやりずらそうだから、タオルをとって、背中を拭いてあげる。
背が高く、背中が広いから、何だかあたしが抱きついているような格好になる。
引き締まった体を間近で感じてドキドキする。
ふいに海斗が体の向きを変えて、正面からあたしをぎゅっと抱きしめた。
海斗の力強い腕に、すっぽり包まれて、安心している自分がいた。
「お前が無事で本当に良かった」
ぎゅっとますます力が入る。
また新しい涙が零れた。
「すげぇ、不細工」
あたしの顔を見つめて、ふっと笑う。
「だってしょうがないよっ、あんな意地悪っ……!」
本格的に泣き出してしまう。
「う〜!」
一応声を押さえるけど、嗚咽が口から洩れる。
「あれがあいつの意地悪だとまだ思ってるのか?」
「だって、最近ますます意地悪なんだもん……」
「お前、バカだろ?」
「はあ!?」
「あいつもバカみたいに不器用だけど、お前もどうしようもねぇな」