キョウダイ
第15章 守られる愛
呆れたように、ため息をついている。
バカにしたような視線を感じる。
「何よもう、なんなわけっ」
頭にきて、泣きながら、海斗の右腕を叩く。
「あいつはお前の事本気で好きなだけだろう」
「意味が分からないっ、意地悪ばっかりだもんっ」
「俺には分かるけどな?もうあいつには近付けさせねぇよ、絶対にだ」
また、ぎゅっと力を込めて、抱きしめられる。
その力に安心して、しがみつく。
上半身裸で抱きしめ合っているから、あたしの顔の前には海斗の腹筋があって、押さえつけられると、あたしの唇が触れてしまう。
ぺろりと舐めると、しょっぱい汗の味がした。
海斗の呻き声が小さく聞こえる。
「なに煽ってんだよ」
その瞳が急に甘くきらめいて、海斗の顔がゆっくりと近付く。
「嫌じゃないか?」
あたしの顔のすぐ目の前で、海斗の顔が斜めに傾く。
薄茶色の真っ直ぐな、切れ長の瞳。
見惚れるように見つめる。
見つめ合い、お互いの睫毛が重なり合う。
「嫌じゃない」
ゆっくりと遠慮がちに、唇が重なり合う。
唇が触れた瞬間から、甘く痺れるような震えが体じゅうに走る。
甘く絡む舌先、遠慮がちにあたしの口の中に侵入したくせに、だんだんとそれは激しさを増していく。
お互いに抱きあっている腕が、官能的に動いて揺れる。
もっと抱き寄せるように、背中をさする。
「んんっ!……海斗っ!」
唇の隙間から、思わず洩れる名前。
あたしの目から新しい涙が零れた。
この涙はなんなんだろう……。
分からない。
頭の中がごちゃごちゃして、いろんな感情が入り乱れて、今はただ、海斗に抱きしめてもらいたい。
安心する腕の中で。
めちゃくちゃに抱いて欲しい……。
そう思っている自分がいた。