キョウダイ
第16章 流されてゆく思い
車の中で、考えてた。
葵を一人には出来ない。
昔からずっとべったりくっついて、誰も近づけないようにしていた。
回りに対する威嚇。
ある意味、束縛、独占。
可愛い弟のふりして、目を光らせていた。
実の父にすら。
本能で感じていた。
みんなが葵を狙っている。
だけど、可愛い弟のふりしてたせいで、葵に男として意識してもらえなかったから。
体力つけて、筋トレして、モデルのバイトに出るようになったんだったけど。
今度からは、何とかして一緒に行かなくちゃいけない。
もっと早く、気付いていたら、よかったのに。
後になってから、思った。
もっと早く。
海斗が無理矢理葵を奪った、その時点で。
全てが遅かったのかもしれない。
「ただいま」
もうすでに、外は暗くなっていた。
なんだかんだと遅い時間になってしまっていた。
家に入ってリビング、台所に行く。
テーブルの上に、葵が作ってくれた晩御飯が用意されていた。
それから葵の部屋をそっとドアを開けて覗いてみる。
真っ暗な部屋のベッドの中で、聞こえる葵の寝息。
現在21時30分くらいだ。
はっきり言って、葵は早寝早起き、規則正しい生活をしている。
朝は多分5時30分くらいに起きる。
弁当を全員作ってくれるし、朝ご飯の用意もしてくれてる。
朝から掃除洗濯とこなしている。
超家庭的、裁縫も昔から得意。
料理の腕もいい。
美味しくいつもありがたく、頂いている。
晩御飯を食べて、2階の自分の部屋へ行く。
海斗の部屋を通り過ぎて、自分の部屋へ入ろうとしたところで、海斗が部屋から出て来た。
「遅かったな?」
「早く帰りたかったんだけどね?……葵に変な事してないだろうね?」
「さあな?……俺よりも明に注意しとけよ?あいつ、今日、葵に乱暴しようとしやがった」
イライラした様子で、髪をぐしゃっとかきあげる海斗。
俺ははっとなった。