キョウダイ
第16章 流されてゆく思い
「明が?本当に?」
意外だった。
明が葵を好きなのは分かるけど、無理矢理するようなタイプじゃない。
体を求めてる訳じゃない。
本当に好きになって欲しい、振り向いて欲しい。
意地悪して、嫌いだと言われても、ちょっかいかけてるだけ、それで満足しているようなふしもある。
「ああ、もうあいつに近づけさせない、たまたま俺がいたから良かったものの、注意しとかないと、なにするか分からない」
「そっかぁ、明もとうとう動き出したのかな……」
ぞくりとした。
冗談じゃない。
葵は俺のものだ。
絶対に守る。
そう思いながら、海斗もそう思ってるのかなと思う。
まぁ、守る人数は多いほうがいいけどね。
何するか分からない。
海斗の言葉に引っかかりを覚えた。
胸がざわつく。
何するか分からない?
明が?
お前だって……。
「海斗が葵を助けたの?」
自分の声がやけに遠くから聞こえた。
「ああ、あいつショックだったみたいで、ずっと泣いてたから」
泣いてたから?
慰めたの?
どんなふうに?
胸がざわつく。
ああ、どうして……。
キョウダイなのに。
幼馴染みなのに。
どうしようもないくらいに、嫉妬している。
分かっているんだ。
俺がその役目を果たせなかった。
本当に好きなら。
葵の傍を離れたらダメだ。
敵だらけの家の中で。
学校でも。
どこだろうと、もう離れない。
葵を誰にも触れさせない。
嫌な想像が頭に浮かぶ。
そしてそれが現実にあったんだろうとも思った。
分かっていた。
たぶん最初から。
葵は海斗を拒まない。