キョウダイ
第2章 やきもち、衝動。
バスルームに連れて行かれ、海斗は一緒に入りたがったけど、そこはしっかり追い出して、ゆっくりシャワーを浴びた。
家には各階にバスルームがある。
海斗の部屋は2階だ。
そっちでシャワーを浴びるらしい。
シャワーを浴びて、髪や体を洗い流した。
鏡の前に立ち、ギクリとする。
身体中がアザだらけ。
キスマーク?
胸の回り、首筋。
海斗の激しい愛撫を思いだす。
ゾクリとした。
昨日までと違う、鏡の中のあたし。
あそこから、血が流れていた。
その時、ふいにバスルームのドアが開いた。
ギクリとする。
しまったっ。
いつもは必ず鍵をかけるのに。
鍵を閉め忘れてたっ。
バスルームに何の気なしに入って来たのは、1つ年下の弟、柊斗だった。
色素の薄い瞳は大きめで栗色の髪は癖毛でふわふわしている。
今日はモデルのバイトに行くと言ってたから、帰ってまずはシャワーを浴びにと思ったんだろう。
「葵ちゃん?」
驚いたように目を大きく見開いて、あたしを上から下まで見つめる。
これが純情でうぶな弟なら、パッと見て、パッと逃げるんじゃないかと思う。
それなのに。
冷静に上から下まで見つめて、
「葵ちゃんっ、誰にやられたのっ?」
第一声がそれだった。
面食らうあたし。
「血がっ、それにそのアザっ……!」
あたしは慌ててバスタオルで体を隠す。
柊斗の瞳がきらりと光った。
「海斗だねっ、あいつ俺がいない間に葵ちゃんに無理矢理こんなっ、いくら血が繋がってなくても‼」
そこまで言って、はっと口を押さえる。
「今……、なんて言ったの?」
いくら血が繋がってなくても?
柊斗はあたしから目を逸らす。
「いや……海斗が……」
気まずそうに視線をさ迷わせている。
「柊ちゃん?」
あたしは柊斗の瞳を睨むようにじっと見つめる。
ズキン。
何故だか頭が痛くなる。
「血が繋がってないって、何?」
自分の声が妙に冷静に聞こえた。