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キョウダイ

第2章 やきもち、衝動。





「おい!葵!大丈夫か!?」



「……うっ……くっ……」



息ができない……。



金縛りみたいになって、体が動けない。



息を吸うのにうまくできない。


苦しいっ。


ぐいっと、掴まれた手を引っ張られ、体を起こされる。


ふわりと暖かい体温に包みこまれるように、抱きしめられた。


引き締まった広い胸。


背中に回された力強い腕。



「か……い……?」



やっと息がつける。


ゆっくり目を開ける。


「葵?大丈夫か?」



「うん……、あたし……?」



「うなされてた。また、いつもの夢か?」



「うん……」



「だだの夢だ……。気にすんな……」



頷きながら窓の外を見る。


もう外は薄暗い。


海斗の肩越しに、うっすらと月明かりが見えていた。


あれからどれくらいの時間がたったんだろうか?


学校から帰ったのが昼過ぎで、それから……。


背中を撫でてくれている海斗。


唐突にお腹が鳴った。


「お腹空いた……」


考えたら昼間から食べてないんだった。


「減ったなあ?」


あたし達は裸のまま、抱きあっていた。


そっと離れてベッドから下りようと、したんだけど。

「きゃあっ!」


まさに、へにょっと、足に力が入らなくて、ぺたんっと床に座り込んでしまった。


「悪いっ!俺のせいだな?手加減できなかった」


申し訳なさそうに髪をかきあげながら海斗が言う。


「手加減ってなにっ?」


もう一度立ち上がる。


産まれたての子鹿みたいに足がガクガクする。


「バスルームまで連れてく」


ぐいっと、抱きあげられる。


お姫様抱っこ?


「いやっ、恥ずかしいしっ」


バスルームは隣にあるし。


「うるせえ、いいから」


有無を言わさずに連れて行かれる。


妙に優しい。


もともと優しかったかな。


ただ、ぶっきらぼうで、気が短いだけだ。


海斗の首に甘えるように手を回す。


何だか幸せな気分だった。


だけど。


何か大事な事を忘れてるような。


あたしはそれに気付かない振りをした。


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