キョウダイ
第17章 絡みあう糸
明side
スマホの着信音が鳴る。
パソコンのキーを叩いていた手を止めてスマホを手に取る。
「久し振り、明、元気か?」
「誰だっけ?」
とぼけたように言う。
「ひでえな?お前生きてるか?最近真面目になったらしいじゃん?」
「真面目だけど?俺は昔からね?」
「良く言うよ?なんか企んでんじゃないの?」
「まあね……いろいろ考えているけど……どれもつまんないんだ、飽きたんだろうね?お前らとつるむのも、割と面倒だし……」
「面倒なのが好きなんじゃねえの?じゃあ、シンプルで簡単な事しようぜ?」
「じゃあ、女の子を一人拐って欲しいな?無傷で俺のとこに献上してくれよ?」
「いいけど、無傷で?やっちゃだめか?」
「ダメだな。やっぱりやめた……」
「なんだよそれ!」
ギャーギャー喚くスマホの通話を切る。
女の子を一人。
俺のとこに献上。
例の場所。
誰も来ない、助けが来ない。
ふっと一人自嘲的に笑う。
「もう無理だろう」
理科室で葵にキスした事を思い出す。
別にやるつもりだったわけじゃない。
発作があった後に出来るわけないのに。
ちょっとした嫌がらせだ。
まぁ、明日から、また想像つく。
暫く葵は一人になれないだろう。
海斗と柊斗がピッタリ張り付くだろう。
きっと俺はまた近付けない。
そのくせあいつらはキョウダイのふりして、葵を抱いてるんだろう。
「あいつら、邪魔だな……」
知らず言葉になっていた。