キョウダイ
第17章 絡みあう糸
不服そうに明の瞳が陰る。
「熱がある人は立派な病人だからね?どうして休まなかったの?しかもこんな早くに、ばかでしょ?」
「葵ちゃんって、俺に馬鹿って良く言うよね?」
「しょうがないでしょ?言わせた方が悪いからね?」
「昨日も……馬鹿な事をしたと思ってる……、ごめん葵ちゃん……俺は君に嫌われたい訳じゃないんだ」
熱のせい?
熱っぽい眼差し。
苦しそうな表情。
そんな顔を見たら、こっちまでつられて、苦しくなる。
「最近の明は、あたしに嫌われたくて、意地悪してるのかと思ったよ?」
なんとなく、目を反らす。
分からない。
どうしてか、泣きそうになる。
「違うんだ、ごめん、俺は……君が好きで、焦ったり、ヤキモチ妬いたりして、君につらく当たってたのは認める……」
いつも意地悪なのに、あたしが泣くと急に優しくなる。
優しくされたら、余計に悲しくなるのに。
「葵ちゃんのリアクションが楽しくて、ころころ変わる顔ががもっと見たくて……でも、やり過ぎだった。
俺を……嫌わないで欲しい……」
自信なさそうに、体調のせいなのか、ベッドの上で、あたしの顔色を伺うような視線。
ベッドの上に座るあたしの髪をすくい唇を寄せる。
艶やかなしぐさにドキドキする。
「たぶんあたしは明を嫌いにはなれないと思うよ。明はあたしといとこだし、唯一の家族みたいなものだよ。
あたしが忘れていた明と家族との日々はかけがえのないものだったから……」
明の瞳の色がすぅっと変わる。
「家族……」
「明の部屋にあったあの写真は?明が撮ったの?」
「いや、あれは、君のパパが撮ったモノだよ」
「沖縄に旅行に行ったり、いろんなとこに行ったよね?皆でいっぱい写真を撮ったりして……明は今はもう撮らないの?」