キョウダイ
第17章 絡みあう糸
だけど、記憶の戻ったあたしには、幼い頃の優しくて無邪気な明も思い出していた。
悶々と悩みながらも、朝食の用意をしていたら、
ピンポーン。
家のインターホンが鳴り響く。
まさか。
まさかだよね。
ちょっと待ってよ。
早すぎる。
誰も起きてないし……。
心臓が早鐘を打つ。
こんな早くに、体調は大丈夫なの?
何故だか明だと思う。
震える手で、玄関のドアを開けた。
「おはよう、葵ちゃん」
真面目な顔をして、少し表情の固い明がそこにいた。
少し長めの艶やかな黒髪から覗く瞳が、気遣うように揺れていた。
青白い顔色。
儚げな色気にも見えるけど、体調は万全じゃないと分かる。
「明、あんた、体調悪いんじゃないの?」
昨日理科室で苦しそうにしてた姿を思い出す。
今日は天気がいいけど、寒そうに見える。
「大丈夫だよ、そんな事よりも……、昨日はごめん……、どうかしてたんだ……」
頭を下げている。
「そんな事よりもじゃないでしょ?バカなのっ?」
思わず声を荒げてしまう。
明のおでこに手を伸ばしてみる。
「葵ちゃん?」
びくりとしてのけ反る明。
やっぱり、おでこに乗せた手が熱い気がする。
「熱があるんじゃないっ、何やってるのよ、ばかっ」
あたしは明の手を強引に引っぱる。
「あがって!」
「ちょっと、葵ちゃん?」
ふらりとした明の体。
細めの腕を強引に引っ張って、客室のベッドに連れて行く。
無理矢理座らせてベッドに横にする。
「今日は学校休んで?だめでしょ、そんな体でふらふらしちゃあ」
子供に言い聞かすように、明の瞳を見据える。
「病人扱いしないでよ」