キョウダイ
第3章 血の繋がり
「ごめん、葵ちゃん。俺、そんなつもりじゃ……!」
うつむく柊斗。
「着替え、持って来て」
「えっ?」
「いいから、あたしの着替えっ、忘れたから持って来てっ、早くっ」
いらいらいら。
急かすように言う。
つられるように、柊斗が急いであたしの部屋に行く。
それからそんなに待つことなく、ドアの隙間からあたしの着替えを渡してくれる。
黙ってそれを受けとって着替えた。
その間お互いの会話はなし。
もくもくと着替えて、バスタオルも染み抜きして、洗濯機に入れる。
それから自分の部屋を片付けて、シーツを取り替えて、洗濯機に放り込む。
柊斗はなんとなく、あたしに付いてくる。
あたしは自分の部屋に入り、ベッドに座る。
暫くして、柊斗が口を開いた。
「この部屋で俺がいない間に、何があったんだよ?海斗なんだろ?無理矢理だったの?」
あたしの腕をつかんで顔をのぞきこむ。
薄茶色の瞳が心配そうに揺れている。
「無理矢理じゃないよ。あたしも望んで……そうなったの」
嫌じゃなかった。
最初は強引な感じもした。
恐いとも思った。
だけど。
嫌じゃなかったんだ。
「海斗の事、好きなの?」
柊斗の瞳が一瞬ぎらりと光った。
「分かんない」
だって、キョウダイだって思ってたし。
そうだ。
「血が繋がってないってどういう事?」
「葵ちゃんって、無意識に残酷だよね。あんな姿見せて、この部屋のありさまを俺に見せといて。それなのに相変わらず無防備でさ。俺が何も感じないとでも思ってるわけ?」
あたしの質問に答えてくれない。
「柊ちゃん?」
それよりも。
教えて欲しいのに。
「俺達は血が繋がってない。キョウダイなんかじゃないんだ……!」
柊斗はそう言って、あたしの唇にキスをした。
腕をつかんで、下から顔をのぞきこむ、そのままの態勢で。
不意討ちだった。
話がしたいのに。
「ちょっと、柊ちゃっ……!」
いつものように、文句を言いたいのに。
唇を塞がれる。
そんな、柊ちゃんのくせにっ。