テキストサイズ

キョウダイ

第18章 育ての親






大きなホテル。


右も左も分からない。


勢いに乗って無茶苦茶に走って。


公園の小さなトンネルの中で膝を抱えた。


震える指でスマホの画面をタッチして。


藤森 悠斗。


悠ちゃんに電話をかける。


2回目のコール。


『葵っ?
今どこにいるんだ、皆心配して連絡があったけど?』


悠ちゃんの声を聞いた瞬間。


涙が滝のように溢れた。


『……っ!
泣いてるのか?
どこにいるんだ、すぐに行くからっ』


『……うっ、分かんないっ……あたしっ、迷子になっちゃっ……ヒック…』


『迷ったのか?
いいか、落ち着いて俺の言う通りにするんだ。
葵のスマホにはGPS機能がついてるから、位置情報かGPSってとこをただタッチしてオンにすればいいから、アプリが入ってた筈だから大丈夫だよ、1度電話を切るけど、落ち着いてやるんだよ、すぐに調べるから、待ってろよ』


『うんっ、うっ……』


通話が切れて不安になる。


だけど言われた通りに画面を操作する。


少ししたら悠ちゃんから着信が入った。


『悠ちゃんっ……』


『何でそんな所にいるんだっ?
高速道路で最短ルートを使っても30分はかかるから、その間、絶対その場所を動くなよ?
何かあったらすぐに連絡しろ、頼むから大人しく待ってろよ?』


『うんっ……うんっ……』


また通話が切れてしまう。


公園の小さなトンネルの中で。


一人で膝を抱えて泣いていた。


あたしの泣き声が響いて。


ますます不安になる。


心細くて。


暗く寂しくて。


どうしてこんな所にいるんだろう。


何でこんな事になったの?


あたしがいけないの?


あたしのせいで。


お父さんとお母さんは離婚しちゃったの?


あたしがママに似ているから?


それだけの理由で。


お父さんはあんな事を。


こんな遠い場所に連れて来て。


逃げられない状況にしておいて。


無理矢理にでも。


抱こうとした。


そこまでして。


どうして?




ストーリーメニュー

TOPTOPへ