キョウダイ
第18章 育ての親
悠ちゃんの車に乗って走り出す車の中で。
チラリと悠ちゃんを見るけど。
やっぱり、怒ってる。
ユラリとした怒りのオーラ。
運転している表情はいつものポーカーフェイス。
だけど目が。
鋭く光っている。
スレ違う車のライトに照らされて瞬く眼差し。
うっ。
怖い……。
その時。
あたしのスマホの着信が鳴った。
画面に表示されている名前は。
『お父さん』
ビクリとして画面を見つめるあたし。
そのスマホをあたしの手からひょいと取り上げる。
「悠ちゃん?」
「……久し振りだな親父。
いい年して何やってんだよ」
片手でスマホを持って。
片手で器用に運転してるけど。
「あの、悠ちゃん……」
あたしの顔をチラリと見る。
「葵が俺に助けを求めたんだよ。
無茶苦茶泣いていたけどまさか親父が何かした訳じゃないよな?
流石にそんな事はしないよな?」
さぁっと青ざめてしまう。
「心配しなくても葵は俺が大事に連れて帰るから、俺のアパートにね?
どういう意味か分かるだろ?
葵は俺のだから、じじいが入り込む余地なんかないから2度と葵に近付くなよ」
低い掠れたような声が、怒ってるからだと分かる。
スマホを無言であたしに差し出される。
ドキドキしながら受け取った。