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キョウダイ

第18章 育ての親






はっとして口を押さえる。


あたしから目をそらして皮肉っぽくふっと笑う。


シャワー室から出て、立ったまま向かい合うあたし達の間に気まづい空気が流れる。


「忘れてただろう?
お前って本当に天然でたまに残酷。
それとも分かってやって知らない振りをしてるのかな?
それでも俺は馬鹿だから。
今日お前から連絡があって助けを求められて……
嬉しかったんだ」


悠ちゃんの手があたしの首に下げたバスタオルを取ってそのまま濡れた髪を拭いてくれる。


「他の誰にも連絡せずに真っ先に俺に連絡してくれた。
キョウダイで車に乗ってるのは俺だけだけど、柊斗でも海斗でも絶対助けには来た筈だ。
真っ先に俺に連絡してくれたのはどうしてだ?
勘違いしそうになるよ?」


「それは……だっていつも悠ちゃんが……」


助けてくれたから。


迷子になっちゃった時。


必ずいつも助けてくれた。


優しいお兄ちゃん……。


「俺はお前が好きだからずっと待つつもりでいたのに、お前と来たらキョウダイに襲われるわ、親父にも襲われそうになるわ、明はちょっかい出すわで、流石にじっと待つどころじゃないと思ったよ」


ごしごし、優しくタオルで髪を拭いてくれる。


その手が髪から頬に手が乗せられる。


ちゅっ、軽く唇が重ねられた。


すぐに唇は離れてあたしの顔をじっと見つめる。


「俺は俺のやり方でお前を守りたい。
だからお前の傍にずっといたい、それがお前の為になるし、兄としてもそれが一番いいと思うから」


また唇が重ねられる。


軽く触れてあたしの顔を見つめる。


「俺のモノになれよ葵。
他の誰のモノでもなく、俺だけのモノになって、あの家には帰るなよ。
……お前は俺を好きになる。
もう待ってあげられない。
ずっと俺の傍にいて、他の奴の事なんか考える暇がないように愛すから」


ゆっくりと唇が重ねられる。


優しく触れらるだけのキスが妙に心地いい。


何故だか体が動けない。


悠ちゃんの優しい瞳が甘く輝く。


心地いい優しさに包まれて。


ゆっくりと目を閉じる。


……あたしの心は疲れていた。

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