キョウダイ
第19章 悠ちゃんの生活
だけど、実際は他人で、血の繋がりなんか、1つもなかったのに。
あたしの本当のキョウダイは、奏ちゃんだけで、両親も死んでしまって。
一人ぼっちなのに。
好きだと言ってくれた。
キョウダイだから、正直みんな好きだから。
違いなんか分からなくて。
エッチをして、流されて。
快楽に溺れて、ますます分からなくなった。
必要とされるのが嬉しかった。
どこかでずっと、気付いてたのかも、しれない。
あたしは本当にここにいて、いいの?
あたしの居場所はここじゃないのかもしれない。
どこかで分かっていた。
記憶はなかったけど、あたしは本当の家族じゃない。
『……悠ちゃんなら、いい』
明が言ってた言葉が、やけに頭の中に残った。
どうして?
もう、会えないような、口調で。
別れの言葉みたいに……。
『死ぬかもしれないって、言われた子供が、海外で大きな手術をして、それが成功したとして、いきなり何のリスクもなく、元気に長生き出来ると思う?』
……あの言葉が本当なら。
明は意地悪だけど、嘘はつかない。
朝会った時も、顔色が悪かった。
最近、ずっと、顔色が悪い。
暫く学校に来れないかもしれない。
もう、会えない?
明に……。
ひょっとしたら、もう、二度と?
……そんな、まさか……。
『葵ちゃんっ!』
あたしの名前を呼ぶ奏ちゃんの表情が、今でも忘れられない……。
その時、あたしの背後で、荒い呼吸が聞こえた。
ひきつったような、呼吸には、聞き覚えがあって、びっくりして振り返る。
「……どうして、ここに、いるの?」
夕日に照らされた、明の蒼白い顔と、奏ちゃんの顔がまた、重なる。
「……悠ちゃんが、凄い剣幕で葵ちゃんを探して……、家の人間が新幹線の乗り口で……見かけたって聞いて……。
飛行機とタクシーで……」
あたしは信じられない思いで、首を振った。