キョウダイ
第19章 悠ちゃんの生活
今朝まるで二度と会えないような、口ぶりだった癖に。
体調が悪いから、暫く学校を休むって言ってたのに。
朝から、顔色も悪くて、息も荒かったのに。
そう言ってた、明が、今ここに、いた。
ハア、荒い息をついて、膝まずく明に駆けよって、支えるように、抱きしめた。
……冷たい体にゾクリとして、暖めるように抱きしめた。
「体調悪いのに、馬鹿じゃないのっ?」
明を抱きしめて、肩の上に頭を乗せて、呟く。
「……馬鹿なのは、葵ちゃんでしょ、真理ちゃんに何を言われたのか知らないけど……、急に一人で九州とか……ぶっ飛び過ぎ……。
あんな奴無視して、悠ちゃんの元に行けば、いいのに……」
「明は……悠ちゃんなら、いいの?」
「……悠ちゃんなら、昔の約束を叶えてくれるよ?……俺には決して、出来ないから……ね……」
「そんな、約束、どうでもいいのに」
「……何を言ってんの?」
「長生きとかそんなの、どうでもいいよ……」
「はあ……?」
明がゆっくり体を離して、あたしの顔を探るように、見つめる。
あたしはその綺麗な顔に近付いて、唇を重ねた。
ゆっくりと、想いを込めて。
唇を重ねた瞬間に、気付いてしまった。
ああ、あたし、明が好きなんだ。
意地悪で昔から、振り回されてばかりで、喧嘩ばかりで、泣かされてばかりだったのに。
憎たらしい時もあって、どうして、こんな奴はやめた方がいいって思うのに。
認めたくなかった。
だけど、止められなかった。
気付けばいつも一緒にいて、最終的には支えてくれた。
「…………!」
戸惑ったような明の唇。
優しく抱き寄せられて、ハア、息を洩らしながら、ゆっくりあたしの口の中に舌が侵入して、絡められた。
夢中になって舌を絡めて、明の背中にしがみついて、涙が流れるのに気付いた。
胸が苦しくて、でも暖かくて、嬉しくて。
「……君は、悠ちゃんの所に戻るべきだ……」
唇を離して、熱い息を吐きながら、明が掠れた声で呟く。
「今朝は傍にいて欲しいって言ってた癖に」