キョウダイ
第21章 残りの人生
「ママ〜見て見て〜」
きゃっ、きゃっ、笑いながら、奏ちゃんがジャングルジムに登る。
大きな目が印象的な男の子。
今年で5歳になる、あたしの一人息子。
明とあたしの子供だ。
あの時たった一度だけの、あの繋がりで、確かにあたしは明との子供が欲しいと願った。
そして、子宮で感じ取り、確かに宿ったと思ったんだ、不思議な感覚で、妊娠したと気付いた時は驚かなかった。
それどころか、あんなに愛し合ったから、当然だと感じた。
誰の子供か分からない。
回りは騒いだけど、明の両親が当然のように、手助けしてくれた。
生まれた瞬間、DNA鑑定する必要もない、誰が見ても、明の子供だと分かった。
それほど、明に似ている、笑えるくらいに。
子供の名前は奏の名前を貰った。
この子は運命の子。
いとこ同士の子供には、障害がある子が生まれる事もある。
それだけ、血が濃いから、リスクがあるかもと、回りに心配されたけど、至って健康体。
生まれた瞬間に、思わず確認した。
手も指も揃ってる、足も2本、心臓も普通に動いている。
その事がとても、嬉しくて……また、泣いてしまった。
「奏ちゃん、危ないから、そんなに走らないの」
出産後に、看護学校に子育てしながら、通わせて貰って、看護師として、今は病院に勤務している。
いつまでも周防家にお世話になるのも悪いから、子供と二人でアパートに暮らそうと思ったのに、このまま、一緒に暮らそうってお父さんに頼まれてしまった。
明が頼んだ事だから、一緒に居させて欲しいって言われたんだ。
「ママも一緒に遊ぼうよっ」
「え〜、ママは昔、ここから落ちたから、嫌なのよ〜」
あのジャングルジムに登る奏ちゃんを、追いかける。
「よお、葵、今、仕事帰りか?」
公園の前を海斗が通りがかって、ジャングルジムに近付いた。
「海斗も、今帰りなの?」
念願の警官になれて、忙しそうな海斗。
テレビドラマみたいに、事件を追ったり、張り込みしたりするらしい。
「まあな、トレーニングに行くけどな」