キョウダイ
第4章 大人の男の人
「悠ちゃん飲み過ぎてない?」
大丈夫?
ワインボトルの中身はほとんどない。
「柊に話を聞いた瞬間、俺は海斗の事許せないと思った。ずっと大事な妹だと思って、思い込もうとしていた。それをあいつは……」
「悠ちゃん?」
やっぱり酔ってる?
「俺はお前の事、大事だと思ってるよ。ゆっくりお前のペースで俺の事を考えて欲しい。お前を無理に奪うような事はしない。俺が欲しいのはお前の気持ちだからな」
「あたしの気持ち?」
首をかしげる。
「俺に惚れて欲しい、って事。お前の心が欲しいって事だよ」
優しく笑う。
その瞳が妖しく光る。
艶っぽい色気を纏いながらも、気だるくワインを口にする。
絶対酔ってるよぉ、悠ちゃん。
無駄に色気を放つからあたしはドキドキして、悠ちゃんから目を放す。
ガラス張りの眼下に広がる、街のネオン。
なんか、いろいろあって、疲れたけど。
こんな気分で美味しい食事ができるのは、悠ちゃんのお陰だよねきっと。
黒いジーンズに白いシャツ、カジュアルな黒いベストを着ている。
シンプルだけど格好いい。
こうゆう場所でも浮いてなくて、しっくりと馴染んでいるから不思議だ。
対するあたしはやっぱりどうも馴染めない。
お料理は美味しいし、景色もあってムードもあるんだけど。
海斗、大丈夫だろうか?
海斗の事、好きなの?
分からない。
ただ、抱かれただけだ。
最初は嫌だと思ったけど、そこまで拒めなかった。
拒もうと思えばできた筈だ。
海斗だってそこまではないだろうし。
流されるように、抱かれた?
気持ち良かったから?
あたしってば、えっちなのかな?
「俺と一緒にいるのに、他の男の事考えるの禁止」
悠ちゃんがすっと手を伸ばして、あたしの頬に手を添える。
その瞳がぎらりと瞬いた。
怒ってる?
「その顔まずい、ちゃんと女の顔もできるんだな?」
ぎゅっと頬をつねられる。
ドキドキして顔が赤くなる。
慌てて目を伏せる。