キョウダイ
第5章 戦いの火蓋
お前らには渡さねえよ。
頭の中で繰り返す。
そんなの。
葵に選ばれなきゃ分からないじゃないか。
「俺だって、葵を大事に思ってる。あいつに選ばれるように、努力するつもりだ」
「俺だってそうだよっ」
「何だよお前みたいなのがたち悪いんだろうが、甘えたふりしていつもべたべたしやがって」
ばれてたか。
「うらやましいんでしょ?弟の特権だもんね?」
「エロガキがっ!」
隣のソファーにいる海斗に頭を殴られる。
「痛いな、自分だってむっつりじゃんっ、さっきすごい胸元ガン見してたよね?」
「見てねえよ!」
また殴られそうになり、今度はそれをひょいとかわす。
「お前ら……、うるせえ……。葵の勉強の邪魔になるだろうが?」
悠ちゃんから、ひやりとした冷気のオーラが放たれた。
いつもより一際低い声でこめかみを押さえながら言う。
慌てて海斗から離れる。
それからはっとして、恐る恐る口を開いた。
「悪いけど悠ちゃん。俺達も明日テストなんだけどね?」
その一言で、広いリビングが妙に静まりかえってしまった。