キョウダイ
第5章 戦いの火蓋
海斗は不機嫌を通り越して、青白い顔色だ。
こっわ。
しぶしぶ離れる。
「今日はついでに泊まるからな」
「疲れたし、勉強しなきゃだぁ、シャワー浴びるからね」
「えっ、もったいない、写メ撮らせてよ」
「悠ちゃんが撮ってたから、悠ちゃんからもらって」
言いながらもさっさと部屋へ向かう葵。
すっかり、明日のテストモードに切り替わってる。
残された俺達は、なんとなく、きまづい空気。
それもそうだ。
悠ちゃんが怒って海斗を殴るとか、今までなかったし。
なんとなく、みんなリビングに集まり。
それぞれがソファーに座る。
やがて、悠ちゃんが口を開いた。
「お前らが葵の事を好きなんだって事は見てたら分かるし、知っていた。いつかこんな事が起こるんじゃないかとも、思っていた」
俺達は黙り込んでいる。
俺だって分からない。
強引にキスしてしまった事を思いだす。
「だけどこれからは、葵の気持ちを優先して行動してくれ。あいつが嫌だと言う事はするな、分かるな?」
「じゃあ、いいって言われればいいんだね?」
「お前ね。要するに、抜け駆けするなって意味だ。あいつが好きだからいいって言われればいいって事だ」
「ふうん」
好きになってもらえればいいって事だよね?
そんなの。
当たり前じゃない?
「分かったか?海斗?」
「分かってる」
「まあ、その腕じゃ当分何も出来ないだろうけどね」
ニヤリと笑ってる悠ちゃん。
うわあ、きっつ~。
「何だって?」
ぎらりと海斗の目付きが変わる。
うわあ、もう、煽らないで欲しいな。
片づけるのが大変だったんだからね。
「それから学校ではちゃんと今まで通りにしろよ、変なこと言わないように」
「はあい」
「分かってるよ」
「それから、俺も葵の事本気で好きだから。あいつを泣かすような奴は誰だって許さないから、そのつもりで。お前らには渡さねえよ」
「何?」
「はあ?」
びっくりして悠ちゃんの顔を見つめた。
相変わらず読めない笑顔で笑ってる。