キョウダイ
第6章 戦いの火蓋 2
嵐のような一日が過ぎ去り、何事もないように、また一日が始まろうとしている。
昨日は夜にお母さんが帰って来て部屋でいろいろ話をした。
泣きながら今まで黙ってた事を謝り、抱きしめてくれた。
それからあたしの本当のお母さんの写真を見せてくれた。
あたしにあまりにもそっくりで、びっくりした。
お父さんとお母さんと、あたしの本当のパパとママ。
ハンサムで優しそうな男の人。
どこかで見た事あるような、という印章だ。
思い出せないからぴんとこなかった。
お父さんからはメールがはいっていた。
今度ゆっくり食事でもして話しよう、という内容だった。
取り敢えず、あたしは、ちゃんと愛された子供だったんだ。
その事が分かっただけでもいい。
いつもと同じように皆の食事の用意して、洗濯物をして。
部屋で身仕度をしてたら、コンコン、と部屋をノックされる。
ドアを開けると、海斗がいた。
「よう」
右手の三角斤が痛々しい。
「海斗っ。手、大丈夫?着替え出来た?」
ちゃんと制服のブレザーを着ている様子だけど。
「ああ、まあな」
何でもない事のように、肩をすくめる。
それから。
お互いなんとなく、黙ってしまう。
だけど、何だか、心臓が、ドキドキする。
何だろう?
今まで、どうしてたっけ?
内心パニックになりながらも、海斗の顔を伺う。
真っ直ぐに見返される、薄茶色の瞳とぶつかり、どぎまぎしながらうつむく。
えっと、何て言えばいいんだろう?
ふっと空気が動き、海斗があたしに近付く気配がした。
そのまま、右手で、そっと、優しく抱き寄せられる。
左手は骨折してるから、軽く、気遣うように、優しく抱きしめられる。
あたしは黙って海斗の広い胸元に顔を寄せた。
心臓の鼓動。
安心する。
「俺にこういう事されるの、嫌か?」
不安そうな瞳が揺れていた。
珍しい態度に内心驚いた。