キョウダイ
第8章 意地悪な彼氏
「葵ちゃんって何でそんなに頭が堅いの?」
少し呆れ気味な明の顔。
散々だった今日のテストは終わり、明日は苦手な数学がある。
今日は頑張って勉強するから。
固く決意して。
真理ちゃんは悠ちゃんに連絡して、勉強を教えてもらいにアパートに行くみたいだし。
ウキウキしながら早々と帰る真理ちゃん。
そこをわざわざ、あたしのいるクラスにまで明が迎えに来たんだった。
走って来たんだろうか?
それくらい、早い。
「周防先輩っ」
「藤森さん〜」
「葵ちゃんっ周防先輩っ、来てるよっ」
ざわつく教室。
ああ、そうだった。
彼氏のふりをするんだよね。
そう思いながら、一緒に学校から帰り、試験勉強するって話をしてたら、一緒に勉強しようという事になっちゃった。
明の家。
はっきり言って豪邸。
両親は家のお父さんお母さんと大学が一緒だったみたいだし。
お父さんはIT企業の社長さん。
お母さんも同じ会社で勤めている。
門がデカイし、庭にドーベルマンがいて恐いし。
明の部屋は広い。
シンプルな家具。
パソコンの類いが多く、ゲームも多い。
洋画のDVDも多く、ひょっとしてオタクなんじゃないかと思わされるほどの充実ぶり。
マンガやアニメも多く、本人いわく、多趣味だとのこと。
マンガを読みに良く寄り道してたから、マンガの存在が気になるけど勉強する。
まずは苦手な数学から。
ノートと、教科書を広げて試験の範囲をざっと見てたら、パソコンをいじってた明が、プリンターから何やら印刷したほかほかの問題をあたしに寄越した。
げげっ。
苦手な問題ばかり。
「葵のノート見てたらなんとなく、予測できた。その問題をやってみて」
大きな机。
大きなイスに座り、足を組んでくるりと回りながらプリントをあたしに渡すとこが、どっかの社長みたい。
ははー、と命令を聞くような思いで、素直に受け取り、その問題に取り掛かるんだけど。
あたしはふかふかの絨毯の上に座り、テーブルの上にあるプリントを睨みつけている。
センスのいいソファーの上には座らない。
勉強しずらいから。