キョウダイ
第9章 好きな人
気づけばそう呟いていた。
考えて見れば、柊斗に裸を見られていたんだった。
あの時に、海斗にはじめて抱かれた後に。
アザだらけな体を。
見られたんだった……。
そこまで考えて、急に恥ずかしくなる。
自分が急に汚い存在に思えた。
「ごめん、柊ちゃん……」
やっぱり具合が悪いんだろうか?
あたしから頑なに顔を背けたまま。
綺麗な横顔が、あたしを拒絶しているように見えた。
たまらなくなって、自分の部屋に向かう。
「違うんだっ、葵ちゃんっ」
部屋のドアの前まで来ていた。
柊斗が急に追いかけて来て、あたしの腕を掴む。
あたしの顔を見てはっとしたような顔になる。
「どうして、泣いてるの?」
えっ……?
じっと見つめる薄茶色の瞳が、きらりと光った。
「俺に嫌われたと思ったから?ねぇ?どうして?」
言いながらあたしの顎に柊斗の長い指がかかる。
ゆっくり、スローモーションみたいに、柊斗の顔がちかづく。
どうしてだろう。
あっちに行ってと言われてショックだった。
口を聞いてくれなくて、寂しかった。
悲しかった。
「あたし……柊ちゃんに、嫌われたと思って……」
すぐそばでじっと見つめられる。
薄茶色の瞳。
あたしの唇との距離が縮まる。
あと、ほんの数センチ。
「俺に嫌われるのが、悲しい?どうして?」
数センチそばにある、薄茶の瞳が誘うように揺れ、吐息がかかる。
たまらずに目をそらす。
「俺の目を見て、教えて?葵ちゃん?」
甘い声で囁かれる。
嫌われるのが悲しい……。
キョウダイだから?
「あたし……柊ちゃんの事……」
好き……?
そこまでは言えなかった。
ゆっくり、優しく、唇が重なる。
優しく抱きしめられ、背の高い柊斗の体にすっぽりとおさまる。
最初は触れあうようなキス。
徐々に激しく舌を絡められる。
すがりつくように、柊斗の背中に手を回す。