キョウダイ
第14章 陽だまりの優しさ
「悠ちゃん、ジェットコースター行こう!」
「またか?好きだね、お前も?」
遊園地に連れて来てもらってた。
あれから部屋に戻って悠ちゃんが、あたしの服を選んで着替えて、家を出る前に、まだ2階から揉めてる声が聞こえてた。
「だいたいお前が!」
「お前のほうこそ……!」
悠ちゃんが出かけようと、誘ってくれてたし、半かば逃げるように決意する。
うん、行こう!
悠ちゃんの車に乗って、悠ちゃん曰くのデートに出発した。
車の中でうっかり寝ていたら。
あっというまに遊園地に着いていた。
「わぁい!」
いっきにテンションが上がる。
子供の時以来だから、何年ぶりかな?
天気がいいし、日曜だから人が多い。
家族連れ、お父さんとお母さんと、小さな子供の兄妹が目に入った。
「パパ〜次はあれに乗る〜!」
「はい、はい、走らないで、危ないだろう?」
「ママも乗ろうよ〜」
楽しそうな笑顔でみんな笑ってる。
ふっと子供の頃の記憶がよみがえる。
きん、目の前の景色が遠ざかる。
『パパ〜ジェットコースター行こうよ〜』
『あのぶんはね、葵がもう少し大きくならないと、乗れないんだよ』
『え〜乗りたいのに〜』
『危ないからね?あっちに小さな子供の乗り物がちゃんとあるのよ?』
『奏ちゃんも明も乗りたいって言ってたもんっ』
『僕たちはいいよ』
『乗れないならしょうがないよ』
『代わりにパパがジェットコースターの写真をいっぱい撮ってあげるから、大きくなったらもう一度乗りに行こう?』
ズキン、頭が痛む。
そうだ、いつも出かける時、明も一緒に来ていた。
昔は明と奏ちゃんとパパとママでいつも一緒にいたんだった。
たまに悠ちゃんとも遊んだけど。
奏ちゃんが明と悠ちゃんと仲良しだったから。
「葵?少し休憩しようか?」
急に静かになったあたしを悠ちゃんが、心配そうな顔をして支えてくれる。
「うん……」
頭が痛む。
近くのベンチに二人で座る。
悠ちゃんが飲みものを持って来てくれた。