キョウダイ
第14章 陽だまりの優しさ
オレンジジュースとコーヒーだ。
どこに行ってもあたしはオレンジジュースで、悠ちゃんはコーヒーだ。
オレンジジュースを受けとり、
「ありがとね」
笑いながら受け取る。
悠ちゃんはコーヒーをブラックのまま、ゆっくり飲んでいる。
明るい日差しに包まれて、賑やかな遊園地の喧騒の中で、のんびり体を休める。
やっと息ができるような、安心感。
この優しさに包まれたなら、不安な事なんて何もなくなるのに。
だからいつでも甘えられる。
何でも話ができる。
あたしはぽつんと口を開いた。
「悠ちゃんあたし……色々思い出したんだ、事故の前の事とか、明との約束も……」
悠ちゃんの端正な顔が、すうっと真面目になる。
いつも笑顔を含んだ目元が、鋭い光を放つ。
「そうか……。それで?葵は明との約束を思い出して、誰を選ぶつもりなんだい?」
ズキン。
いきなり胸を刺されたような気分になった。
誰を?
選ぶ?
「そんなの……子供の時の約束だし……っ」
「お前にとってはそうでも、明にとってはそうじゃない。ジャングルジムで突き落とされたのを忘れたかい?あいつはお前が思い出してくれるのを、ずっと待っていたんだよ?」
「それは……!でも、あたしは……!」
「お前は、誰が好きなの?」
……えっ?
「本当に好きなのは誰?」
「……柊ちゃんだよ、あたしは柊ちゃんが……っ」
「俺にはそう思えない」
びっくりした。
悠ちゃんがそんなふうに言うなんて、思いもしなかったからだ。
悠ちゃんはいつでもあたしの味方で、甘やかしてくれる人。
あたしは悠ちゃんに甘えたかったんだと、気付いた。
いろんな事を相談して、どうしたらいいのか……。
教えて欲しかったんだ。
だけど、それは。
悠ちゃんに相談できる、問題じゃない。
相談するのが間違いだったと、今更ながら気付いた。
誰を好き?
誰を選ぶ?
あたしが好きな人は……。
柊ちゃんだよ……。
どうしてそんな事を言うの?