キョウダイ
第14章 陽だまりの優しさ
「あたしは、柊ちゃんが……!」
うわ言のように呟く。
「確かに昔から仲良かったし、柊もあの性格でお前にべったりしていたけど、それは本当に恋なの?」
言葉を失う。
そんな事を言われても……。
一緒にいたい。
嫌われたくない……。
抱かれた時は幸せだと感じた。
海斗とは違う。
海斗の時は良く分からない罪悪感と、苦しい、辛いという気持ちがつきまとっていた。
分からない。
恋って何なのか分からない。
この気持ちは違うの?
風が吹いてあたしの髪を揺らす。
近くでくまの着ぐるみを着た人が風船を売っている。
子供達が風船を持ってるくまに群がって、風が吹いたせいで1つの風船が飛んでいった。
舞い上がり、あっというまに空へ飛んで行く赤い風船。
「ごめん、そんな顔をさせたかったわけじゃない。バカだな俺は……。焦ってたんだ。いや、嫉妬していた。認めたくなかったんだ、俺が……」
ぎゅっと抱きしめられる。
ふわりとした、シャンプーの香り。
優しい瞳が揺れている。
あたしはどんな顔してたの?
泣いてなんかない。
「お前が同情で明と付き合ったりなんか、しちゃあいけない。あいつは危険だ。俺が思ってる以上の闇を抱えている」
闇?
明が?
同情で付き合うというよりも、おどされて付き合う事になってるんだけどね。
さすがにそれは、悠ちゃんにはいえない。
「好きだ……」
掠れたような、低い声。
耳元で囁かれる。
ドキドキした。
胸がしめつけられるような思い。
あたしは一体なんなんだろう。
少し前まで本当のキョウダイだと思っていたのに。
悠ちゃんの事、意識している。
ドキドキして、どうしたらいいのか分からない……。