キョウダイ
第14章 陽だまりの優しさ
この光景をあたしに見せるために、わざとあたしをここに呼んだんじゃないかな。
普段は教室で真理ちゃん達と弁当を食べるし。
別に分かっている。
あの中にあたしは入れない。
キョウダイだから。
一緒に学校で弁当を食べるキョウダイなんておかしいもん。
あたしは平静を装い、弁当を広げる。
くすりと言う笑う気配。
「ごめんね?俺が柊斗じゃなくて」
明のこういう嫌味なとこ、昔から嫌い。
あたしはかっとなって、明に向けて、手を振り上げる。
「おっと……」
パシリとあたしの拳は捕まれる。
「明なんか……大嫌い……」
唇を噛んで声を振り絞る。
「知ってるよ?俺は葵ちゃんの怒ってる顔が好きだけどね?」
「明は……あたしを恨んでるの?あの約束を、ずっと忘れてたから……」
はっとしたような明の顔。
探るような視線。
「思い出したとでも言うの?」
信じられない、というように、首を振る。
「そうだと言ったら?」
「もう少し優しくしてくれて、ついでに俺を好きになってくれないとおかしい」
「バカじゃないの?」
「バカだよ。俺は……奏が死んだ瞬間から……狂ってる……」
明の瞳が、色を写してないように見える。
「だから、葵ちゃんが好きなんだよ。大好きだけど同時に憎らしく思うんだ。だってそうだろ?君だけが生き残るなんて……
どうしてそれが奏じゃないの?
君のパパじゃないの?
ママじゃないの?
どうして君だけが?」
あたしの髪をぐいっと引っ張る、明。
「君が入院してる時、俺は海外に手術の為に入院していた。俺の両親も一緒に1、2年は住んでいたんだ……。どういう事か分かる?
俺が日本にいたら葵ちゃんは間違いなく家が引き取っていたんだ。いとこなのに、キョウダイになれたのに……」
あたしの髪を引っ張ってあたしの瞳を見つめる。
「ずっとすれ違ってばかりだね?だから、追いかけたくなるんだ、ずっとイジワルしてあげたい……それくらい、いいだろ?」
あたしの髪をそのまま、自分の唇に寄せてキスをする。
明の長いまつげを見つめる。
色っぽいしぐさにドキドキする。