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セツナ桜

第1章 セツナ桜

「開いた」

 私はポツリと呟く。彼が暗証番号にしていたのは高校時代の好きだったキャラクターの誕生日だった。

 受信フォルダを見ていく。私の知らない女性の名前がある。そのメールを開く。そこには、ハートマークがたくさん散りばめられていた。

 あの桜の木の下で俊哉は、

「離れていても心は繋がっている」

 と言ってくれた。私はその言葉を信じていた。

 なのに、私がいない間に俊哉は私以外の女とデートをしたり、肌を重ねていた。電話やメールで「大好きだよ」と言いながら、私のことを裏切っていたのだ。

 込み上げるものを押さえながら、コートを羽織り、持ってきたトランクとカバンを手に外に駆け出す。

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