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心はまるで水車のように

第12章 心はまるで水車のように

「お待たせ!」

「ほんとだよ! なーんてな」

 瞬は二カッと笑う。それにつられて私も微笑んだ。私たちは歩き出す。電車に乗って、香櫨園駅で降りた。

「なんで、こんな田舎?」

「田舎じゃねぇし! とりあえず、歩くで」

 私は、瞬について行く。川沿いの並木道が延々と続く。

「ここが、大切な場所?」

「ああ。昔、母親と春になるたんびに来てたんや。ここ、夙川って、桜の名所百選に入ってるし、公園とかあって遊べたからさ」

「また、お母さんと来たらいいじゃない」

「……できないんだ。母親、俺が高校入った直後に病気で亡くなったから」

 瞬は悲しそうに俯く。私は、しまったと思った。

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