
Sinful thread
第2章 喪心
葵に貰った合鍵で玄関のドアを開けるとすぐ、リビングから明かりが漏れているのが見えた。
……よかった。葵、まだ起きてるんだ。
ホッとして、玄関の電気を点けた。
その時。
玄関に綺麗に揃えられた、黒いパンプスが目に入った。
ドクンッ
心臓が音を立てた。
あたしのじゃない、見たこともないパンプス。
そもそも、こんな飾りのない、無地のパンプスなんて……
嫌な予感がする。
心地よいほどの酔いを感じていたはずが、一瞬で覚めた。
……ドアを開けるのが、怖い。
「……ただいま」
恐る恐る、リビングのドアを開けた。
正面を見たあたしの目に入ったのは、スーツではないものの、フォーマルなワンピースを着こなす女の人と、その隣にいる葵。
信じ難い光景に、あたしは思わずその場で立ち尽くした。
